蜜蝋(みつろう)は、蜜蜂が作り出す天然のワックス。
古代エジプトでミイラの保存に使用されていたことで知られ、人類の歴史に古くから登場する蜜蝋。しかし、実はそれより以前、私たちの想像をはるかに超える太古の昔から、蜜蝋は世界各地で人々の生活に密着し、広く役立ってきた、まさに「奇跡の産物」なのです。
例えば、こんなお話。
イタリア南部で見つかった4万年ほど前のホモ・サピエンスの遺跡では石器の接着剤の材料として使われ、また、スロベニアでは6500年前の人骨の歯から詰め物として利用されていたことが発見されています。あるいは前述のように、エジプト王朝時代(紀元前4200年頃)にミイラの防腐処理剤として使用される一方、同じくエジプトでは5~15世紀頃と長い間、蜜蝋そのものの貴重さから通貨としても利用されていたとも。
今回は、以前の記事でも少しだけご紹介した「蜜蝋」について、深く掘り下げてみたいと思います。
そもそも蜜蝋とは
蜜蜂の住まいであり、はちみつの貯蔵庫でもある巣は、蜜蝋で作られていて、いわば蜜蝋は巣を作るための建材。巣作りを担当する働き蜂は、腹部にある8個の分泌腺から透明な液体の蝋を分泌し、脚を使って口に運んではこね、アゴを使って正六角形で頑丈な巣房を作っていきます。誰から教えられるわけでもなく、もちろん道具もなく、美しい正六角形を作る蜜蜂たちの正確さは本当に驚きです。
余談ですが、建築用語の「ハニカム構造」という言葉をご存知の方もおられると思いますが、その由来はまさに蜂の巣。正六角形が隙間なく並んだ構造のことを指し、六角形は三角形・四角形よりも少ない個数で必要とする面積を埋め尽くせると同時に、軽量かつ高い強度も誇るため、建築分野で幅広く使われています。ちなみに、ハニカムは英語で「honeycomb」と書き表されます。
こうして蜜蜂が作った巣から採蜜の際に削り落とす蜜蓋部分や、採蜜後の巣を、加熱圧搾などにより精製することで、あらゆる用途で使用できる蜜蝋になります。
蜜蝋の色は淡黄色、濃黄色、黄橙色、茶色、褐色と様々で、これは蜜蜂の体に附着した花粉が蝋の中に溶け込むため、蜜蜂の活動エリアに咲く花によって蜜蝋の色もはちみつの色と同様に異なることがわかっています。
蜜蝋と教会
中世ヨーロッパ以降の教会や修道院では家畜として蜂を飼育し、養蜂が盛んに行われてきました。その理由は、蜜蝋から作られるロウソクを教会では膨大に利用するため。現在でも一部の教会では、教義の思想から蜜蝋ロウソクが推奨され、重要な儀式では蜜蝋ロウソクのみが使用されています。
紀元前から作られてきた蜜蝋のロウソクは、ほとんどススが出ないだけでなく、ほんのり甘い香りがすると同時に物理的に空気を浄化する作用も。そのため、教会内の壁画・絵画やステンドグラス、白壁がススで汚れてくもることがありません。
貴重な甘味料であり薬でもあったはちみつと、祈りに欠かせない蜜蝋ロウソク、両方のために教会・修道院で養蜂が重要であったことを考えると、もはや蜜蝋をはちみつの副産物と紹介するのは適切ではないように思えて来ます。
このように、知れば知るほど興味深い蜜蝋。次回は、現代でも変わらず利用されている蜜蝋の具体的な用途や、現代版の蜜蝋活用術についてお伝えしたいと思います。
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