今回は、ハチミツやハチミツを使った食品・飲料に記載されている「※1歳未満の乳児には与えないでくだい。」という注意書きについて、少し詳しくご説明します。
1歳未満の乳児にはちみつはNG!
栄養価が高く健康に良いとされるハチミツですが、1歳未満の乳児に与えるのは厳禁です。厚生労働省は、重要なお知らせとして「ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。」と発信し、以下のように注意喚起しています。
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1. 1 歳未満の赤ちゃんがハチミツを食べることによって乳児ボツリヌス症にかかることがあります。
2. ハチミツは1歳未満の赤ちゃんにリスクが高い食品です。
3. ボツリヌス菌は熱に強いので、通常の加熱や調理では死にません。1歳未満の赤ちゃんにハチミツやハチミツ入りの飲料・お菓子などの食品は与えないようにしましょう。
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私たちのようなハチミツを扱う食品事業者も、「1歳未満に与えない」との案内を消費者にわかりやすく表示するよう指導されています。
そもそもボツリヌス菌とは?
ボツリヌス菌は、土壌や水の中に広く存在する細菌で、熱に強いためボツリヌス菌の芽胞を死滅させるには120°Cで4分以上の加熱が必要とされ、通常の加熱や調理では死滅させることができません。
包装前に加熱処理を行わないハチミツには、ボツリヌス菌が混入している可能性がありますが、1歳を過ぎると腸管も発達して腸内環境が整うことで、ボツリヌス菌が体内に入っても他の腸内細菌との競争に負けてしまうので、定着・増殖することはありません。
しかし、1歳未満の乳児はボツリヌス菌を退治する腸内環境が整っていないため、腸管内でボツリヌス菌が繁殖して毒素を出しやすく、乳児ボツリヌス症を引き起こすおそれがあります。
乳児ボツリヌス症の症状
乳児ボツリヌス症は1歳未満の乳児に特有の病気で、国内では保健所が食中毒として報告した事例は1986 年以降 3 例、医師が乳児ボツリヌス症として報告した事例は 1999 年以 降 16 例あります。
具体的には、便秘が数日間続き、全身の筋力低下、脱力状態、哺乳力の低下、泣き声が小さくなるなどの症状のほか、顔面が無表情になり、首周りの筋肉がゆるんで首のすわりが悪くなる症状を引き起こすことがあります。潜伏期間が12〜36時間といわれ、症状がひどいと呼吸困難になることもあるため、異変を感じたときはすぐに受診してください。ほとんどの場合、適切な治療により治癒します。
ただし、離乳食やジュースに市販のハチミツを混ぜて与えられたことにより乳児ボツリヌス症を発症した死亡例も報告されていますので、最大限の注意が必要です。
1歳になったら大丈夫?
1歳未満には食べさせられないハチミツも、1歳を過ぎるとリスクの高い食品ではなくなります。
1歳以上になると離乳食などで腸内環境が整う時期になり、通常は体内に入っても成人と同様に他の腸内細菌がボツリヌス菌の芽胞の発芽・繁殖を妨げるため、ハチミツを避ける必要はありません。
祖父母がハチミツの危険性を知らずに、「栄養価の高い食品だからこそ良かれと思って与えた」というお話も耳にします。
そのようなことを避けるためにも、赤ちゃんのお世話をするご家族みなさんでハチミツは1歳未満の赤ちゃんにリスクが高い食品であることを共有し、ハチミツそのものはもちろん、ハチミツ入りの飲料・お菓子などは絶対に食べさせないように注意してください。
■ 参考サイト
[厚生労働省:ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから]https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161461.html#:~:text=食品ではありません%E3%80%82-,3%EF%BC%8E%20ボツリヌス菌は熱に強いので、通常の,ていることがあります%E3%80%82
[消費者庁:ハチミツによる乳児のボツリヌス症]https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/food_safety_portal/microorganism_virus/contents_001#:~:text=大人の場合、ボツリヌス菌,を避ける必要はありません%E3%80%82