HONEY JOURNAL

ハチミツの抗菌性~その1~

2017.12.12 | まっつー先生が語るハチミツと蜜蜂のはなし

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蜂蜜と言えば、「食べるもの」というのが一般的な見方ですが、古代では蜂蜜は食用というよりはむしろ治療目的で使われていました。
エジプト文明でもシュメール文明でも、中国、ギリシャ・ローマでも蜂蜜はたぐいまれな抗菌力、殺菌力のため医療目的のために使われていたそうです。
最近ではこの蜂蜜のもつ抗菌力が再び注目されています。

その一つの理由が抗生物質が効かない耐性菌の問題です。

蜂蜜の抗菌力は、1940年に抗生物質が登場するまでは一般的に知られていました。
しかしアレキサンダーフレミングがアオカビからペニシリンを作り、それが実用化された1940年以降は蜂蜜を治療のために使うわれることはなくなりました。
化学的な抗生物質がそれにとって代わることになるのです。
そしてこの化学的な抗生物質は戦時中には兵隊の傷の治療で活躍し、多くの命が救われました。

もちろん現代でも抗生物質は医療現場で活用されています。
しかしながら、昨今では抗生物質が効かなくなる時代に入っています。
その理由は、抗生物質が乱用されたあまり、それに耐えることができる細菌が登場したためです。
いわゆる耐性菌です。
特にアメリカでは抗生物質が効かない感染症が猛威を奮い、年間2万人ほどの人が亡くなっています。
アメリカだけでなく、ヨーロッパも年間数万人が耐性菌によって命を落としています。
日本でもそうです。大阪の病院や福岡の病院で抗生物質が効かない耐性菌に感染したため患者が亡くなるニュースがありました。
耐性菌の問題は深刻であり、たとえば、癌患者の中には手術が無事に成功し、食事も摂れ歩けるようになったにもかかわらず、耐性菌に感染したため亡くなる人が出てきたのです。

癌を克服できても細菌で亡くなるような事態が生じています。
そしてこのような状況の中、抗生物質に代わって、蜂蜜の抗菌力が見直されています。

では、そもそも蜂蜜の抗菌力とはどのようなプロセスで働いているのでしょうか。
蜂蜜には吸水性があるため、細菌群の上に塗ると細菌は水分を吸い取られ、生き続けることができなくなります。
それでも生き延びることができた細菌は、蜂蜜が水分を吸収する時に作られる過酸化水素にやられます。

過酸化水素とはオキシドールの名前で知られている殺菌力をもった物質です。
水溶液としては家庭では漂白剤や消毒液などとして知られています。
子どものころ怪我をした時に保健室でつけてもらったあの消毒液です。それと同じものを蜂蜜は作り出します。
ただ蜂蜜が作り出すオキシドールは化学薬品とは異なり、皮膚の雑菌を殺すと言っても、皮膚にとって必要な菌は殺さない賢さがあります。

さらに蜂蜜の中にはこの吸水性や過酸化水素による抗菌力以外にも、さらに強力な抗菌力をもつ蜂蜜が近年見つかっています。
それがニュージーランドのマヌカハニーやオーストラリアのジェリーブッシュハニーです。
これらのハチミツはその抗菌性の高さからメディカルハニーと言われています。いわゆる医療用蜂蜜です。

当初マヌカハニーがもつ強力な抗菌作用が何であるか、どのような物質であるのかはわかりませんでした。
ただ確かにマヌカハニーには他にはない抗菌力があったのです。
そこで、他に類がない抗菌作用を持つマヌカハニーの要素ということで、Unique(他に類がない)Manuka(マヌカ)Factor(要因)、つまりUMFという抗菌力の基準値が付けられました。
そしてその後、その要因がどのようなものであるかをドイツの研究機関が見つけたわけです。
それがメチルグリオキサールという物質でした。
他のハチミツにない抗菌作用を持つマヌカハニーのメチルグリオキサールは、がん細胞への有効性も出てきているとも言われています。

マヌカハニーのメチルグリオキサールがどのような働きがあるか、次回詳しく述べてみたいと思います。

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