これまでの記事で、はちみつは古代から世界中で民間療法として使用されてきたこと、マヌカハニーには特有の成分「メチルグリオキサール」が含まれていることをお話してきました。
今回は少し掘り下げて、はちみつの抗菌性の仕組みや、マヌカが持つ成分についてお知らせします。
はちみつの抗菌・抗炎症作用
幼い頃、祖母に「口内炎には、はちみつ。」「のどが痛い時は、はちみつ。」と度々言われていました。同じような記憶を持つ方も多いと思いますが、古くから民間療法として使用されてきただけでなく、厚生労働省の日本薬局方でも「ハチミツ」は医薬品(生薬)として記載されています。
はちみつの抗菌・抗炎症活性のメカニズムは、以下のふたつです。
① はちみつに含まれるグルコースオキシターゼによって発生する過酸化水素の強力な酸化力で殺菌。
② 水分量が少なくほぼ糖類からなるはちみつは浸透圧が高く、細菌の細胞内の水分が吸収され死滅。
マヌカ特有成分「メチルグリオキサール」
マヌカハニーの特有成分「メチルグリオキサール」は、過酸化水素よりも高い抗菌力を持ち、過酸化水素がない状態でも抗菌活性も発揮します。この特有成分により、体内の病原菌やウイルスなどの増殖を抑制し、除去する働きがあります。
では、「なぜマヌカハニーだけがメチルグリオキサールを有しているのか?」。それの答えは、マヌカの花蜜にメチルグリオキサールの元となる物質が含まれているためです。
元となる物質(ジヒドロキシアセトン)は、巣に運ばれて花蜜がはちみつへと熟成される過程で、メチルグリオキサールへと変化していきます。その後、採蜜され保管されている間にも少しずつメチルグリオキサールへの変化は進み、増加していくことがわかっています。
マヌカに多く含まれる「シリング酸メチル」
もうひとつのマヌカハニーに特徴的な成分「シリング酸メチル」。こちらは、マヌカのほか、オレンジとクリはちみつにも含まれていますが、その量はオレンジの2倍以上、クリの25倍以上で、マヌカが最も多く含有することが確認されています。
「シリング酸メチル」は、活性酸素を除去する強力な抗酸化作用があることで知られ、火傷や切り傷などの外傷、ニキビなどの炎症を抑える抗炎症作用があるともいわれます。
多岐に渡るマヌカハニー研究
とてもユニークで特別なはちみつ「マヌカハニー」は、世界中で盛んに研究が行われています。
世界最大の医学図書館「National Library of Medicine」の傘下でデータベースの構築や運用を行うNCBI(研究組織国立生物工学情報センター)。様々な生命科学・医学の情報を検索できるポータルサイトとして世界中からアクセスされているNCBIのサイトでは、マヌカハニーに関する文献も複数見つけることができます。未だ結論付けられていないものもありますが、タイトルだけでもマヌカハニーに期待される効果の幅広さと期待値の高さが垣間見えます。
以下、NCBIで公開されている文献タイトルです。
『マヌカハニーとその成分の抗菌活性:概要』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6613335/
『マヌカハニーの上皮性がん細胞の抑制効果』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7692226/
『マヌカハニーの緑膿菌に対する作用の解明』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7329319/
『抗生物質耐性感染症に対するマヌカハニーとメディカルグレードハニーの臨床的意義』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7693943/
『黄色ブドウ球菌のマヌカハニー併用抗菌薬治療に対する反応性の違い』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4307217/
『マヌカハニーによる黄色ブドウ球菌および大腸菌への生理作用の評価』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6722746/
『糖尿病および非糖尿病ラットにおける、マヌカおよびアカシア蜂蜜の創傷治癒能の比較評価』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6537647/
『マヌカハニーの抗酸化・抗炎症作用による胃潰瘍の治癒促進について』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5307292/
『眼瞼炎治療用マヌカハニーミクロエマルジョンの前臨床開発』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5721633/
『慢性鼻副鼻腔炎の治療におけるマヌカハニーと生理食塩水による副鼻腔洗浄の比較』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7895450/
『マヌカハニーによる創傷病原体に対する抗生物質活性の改善』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3458911/
『マヌカハニーの歯周病への応用。抗菌作用と脱灰作用効果:試験管内試験』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5368358/
様々な健康効果が期待されるマヌカハニーやはちみつですが、多くの糖分が含まれているので、もちろん摂りすぎはよくありません。腎不全の方、糖尿病の方、血糖値やBMIが高めの方などは、特に注意して適量を取り入れてください。